「スピーチロック」とは、言葉で身体的・精神的な制限を加える「虐待」とされているもののひとつです。介護の現場では、何気なくいった一言がスピーチロックに該当するなんてこともあります。
危険から遠ざけるためや、安全確保のための言動もスピーチロックにあたるのでしょうか。今回はそんな「スピーチロック」について考えていきます。
スピーチロックはどんな時に起こる?
スピーチロックが起こりやすい状況としては、介護施設での介護中がとても多いです。現場で何気なく発した言葉や声かけがスピーチロックとして問題になるのです。
特に介護職員が少なかったりして、職員や施設全体がバタバタしており余裕が無い時は「ちょっとまってね」「座ってて」などの言葉が日常的に出てしまいます。
この声掛けが結果的に患者さんにとっては「虐待」と取られてしまうこともあるのです。
スピーチロックの具体例
スピーチロックの難しいところは、明確な線引きがないところです。この言葉はスピーチロックという判断基準が無いんです。
ここでは、スピーチロックについての具体例をみて考えていきます。
具体例「ちょっと待ってて」
女性で認知症のMさんは、車椅子に乗ってホールのテーブルについて座っています。洗濯物をたたむ作業が利用者さんたちは、テーブルの上に積んであるタオルを一生懸命たたんでいます。
Mさんは上手くたたむことも、洗濯物の山に手をのばすこともできません。車椅子に乗っているMさんは、他の方に比べてテーブルが高すぎるので、上手く作業できないのです。
「何をするわけでもなくここにいる...」と感じたMさんは、部屋に戻ろうと思い、職員の方に声をかけます。「ちょっと!」。
ただ、職員さんは忙しいのか「Mさん、ちょっと待っていてね」と言ってどこかへ言ってしまいました。
この後、ぼーっと座っているMさんをみて「何か用事でもあったの?」と声をかける職員さんは誰もいません。Mさんも何をしたくて職員を呼んだのかよく分からなくなってきました。
「ああ、また無視された。いつまで、なにを待っているのだっけ...?」Mさんは、「とにかく、ここにいろと言われた」と感じるようになってしまいました。
今回は、医療現場の方の声掛けによってMさんは「待たなければいけない」「無視された」という感情が生まれています。
最初にMさんの希望を全く聞いていないために、「部屋に戻りたい」ための介助をしてもらうことができませんでした。
このように一人で立つことができない患者さんにとっては、相手のことを思ってする声がけでもスピーチロックになってしまいます。
また、今回のMさんのように認知症になっている患者さんの場合は特に注意が必要です。声をかけてきた時の用事を、次に聞いた時も覚えているかわからないからです。
認知症の人は、記憶力は弱まっていますがその時に感じた感情「無視された」「放置された」は残りやすいのです。こういった感情だけが蓄積していき、被害妄想などに悪化したりもします。
スピーチロックにならない声がけをするには?
スピーチロックにならない声がけをするにはどうしたらいいのでしょうか。
今回の例だと、「まずは用事を聞くべきだった」と思うかもしれません。確かにそうです。ただ、実際の現場では全てがそう簡単には行きません。
重症の患者さんが動こうとした時などは、反射的に声をかけてしまいます。今ひっくり返ったら命の危険があるといった患者さんも中にはいるのです。
こういった時に、言い換えなどで対応するのが介護職員の研修などで行なわれています。そういった記事も書いているので参考にしてください。
スピーチロックについての研修や資料のまとめ
まとめ
虐待と考えられるものは、スピーチロックの他に「フィジカルロック」と「ドラッグロック」があります。
この2つに比べると馴染みがないスピーチロックですが、普段さりげなく言っている言葉が該当したりと、一番現場では多く見られるものです。
介助側はそんな意志がなくても、患者さんは「無視された」「否定された」「放置された」と感じて、悲しんでいることもあります。
介護の現場に立つものとして、相手の感情までしっかりと考えて行動をできるよう、日々勉強していきたいですね。
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スピーチロックに関するまとめ記事を作りました。スピーチロックに関して調べたい情報はこちらの記事から手に入ると思いますので、是非読んでみて下さい。
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それでは、ここまで読んで下さりありがとう御座いました!